家族療法とはなにか

なにかしらの悩みを抱え、それが元で苦しんでいる本人だけを「患者」として見るのではなく、

“家族というひとつのチーム(家族システム)”

にたいして働きかけ、問題を解決していく心理療法・・・・それが「家族療法」です。

パニック障害に陥ってしまったとき、そこに陥ってしまうのは本人の問題であり、近い存在である家族は支えになるべくサポートをしていく、というのが一般的な考えかたですよね。

しかし、この家族療法では“家族全体”という大きな枠組みにフォーカスし、この大きな枠組みのなかにパニック障害に陥ってしまった原因や要因、病の芽などが隠されていないか?といった視点で完治/改善に向け取り組んでいきます。

また、本人がつらいのはもちろんですが、周りにいるご家族も、

「本人にどう接したらいいかわからない」

「いつパニック発作が起きるか不安で自分たちも自由に出かけられない」

「パニック発作が起きたときにうまく対処ができない」

といった心配や不安、様々なストレスを抱えてしまうようになります。

家族療法では、家族というチームのなかに潜んでいるかもしれない病理の原因の調査、そして、家族みんなの心の状態を整えていくことにより本人が安心して回復できる環境を作っていきます。

“誰が悪い”ではなく“チームの形”を変える

本来のカウンセリングでは、病に陥ったご本人とカウンセラーの1対1でおこないますが、家族療法では可能な範囲でご家族も一緒に参加する、というスタイルです。

家族療法において重要となるのが「誰が原因か」を探すことではないという点です。

パニック障害という「招かれざる客」が家族というチーム内に入ってきたとき、家族内の歯車がズレてしまうことはありがちです。

そのズレを調整し、もう一度みんなが楽に過ごせるチームの形を作り直していくのがこの療法の目的と言えるでしょう。

パニック障害における「家族の力」

パニック障害からの回復には、家族の理解が欠かせません。たとえばですが、

心配しすぎてしまい、なんでも先回りして助けてしまう(過保護)

精神論や根性論などで厳しく突き放してしまう(理解不足)

など、こうした接しかたはどちらも本人の不安を強めてしまうことが多々あります。

家族療法を通じ、近い関係であるご家族が“正しいパニック障害の知識を持ち、ちょうど良い距離感での支えかた”を学ぶことで、家という空間が世界で一番安心できる“心の避難所”に変わります。

パニック障害のご本人が、

「家でなら、そしてこの家族の前でなら、もし発作が起きても大丈夫だ」

と心から思えるようになると、パニック障害の症状は驚くほど落ち着いていくことは、統計的にも表れています。

家族療法の主な特徴(家族はつながっている、という考えかた)

家族療法の最大の特徴と言えるのは、家族をバラバラの個人として見るのではなく“みんながつながり合ったひとつの生き物”として捉える点にあります。

ここからは、家族療法の具体的な特徴を3つに分けてお伝えしていきますね。

① 家族は「パズル」のようなもの

家族という枠組みを様々な視点から見てみると、それはひとつの「パズル」として見ることができます。

パズルというひとつの作品を完成させるには、パズルそれぞれのピースがキレイにハマる必要があり、どれかひとつが欠けていても作品は完成しませんよね。

家族内の誰かひとりがパニック障害で苦しんでいるとき。

それは本人だけの問題ではなく、家族全員がパズルのピースとして影響を受けています。

違う言いかたをすれば、家族が少し動き(接しかた)を変えるだけで、本人にかかっている負担をフッと軽くすることもできるんですね。

これを専門的な言いかたでは「システム理論」と言いますが、家族療法はこの「つながり」を利用していきます。

② 犯人探しをしない

何かの問題が起きたり不要なものごとが起きると「誰のせいでこうなったの?」と犯人を探したくなりますよね。

ですが、家族療法では“誰が悪いのか?”という考えかたを一切せず、そこに注視しません。

パニック障害に陥ってしまったこと、その症状を本人と家族の間に起きている「悪循環のサイン」だと考えます。

たとえばですが、

「お母さんのパニック障害への理解不足が本人を不安にさせる」

のではなく、

「本人の不安とお母さんの理解不足がぐるぐるとお互いを強めている」

と捉えます。

このぐるぐるとした悪循環をいかに静止させるか?という関係性においての先の一手を考えていくのがひとつの特徴です。

③ 家族の新しいルールを作る

家族というチームには、そのチーム内における「当然(暗黙)のルール」が存在しているものです(例:悩みごとは隠し通すべき、親には逆らってはいけない、など)。

パニック障害が起きてしまう背景、そこにはいまの家族のなかでは当然のルールとして窮屈になっている場合があるんですね。

家族療法では、様々な話し合いを通じ「いまの家族に合う新しいルール」をみんなで作っていきます。

「困った時はお互い様」

「無理な時は無理と言おう」

「嫌なことがあったら隠さないでほしい」

など、いまの家族に合った新たな風通しの良いルールに更新することで、家族全員が楽に過ごせるようになります。

家族療法がパニック障害に有効な理由

「パニック障害」というこころの病は本人のこころの中だけで起きているように見えますが、実は「周りの環境」が症状の良し悪しに深く関わっています。

「家族」という、いわばひとつのチームはいちばん本人に近い「周りの環境」と言えるでしょう。

そんなチーム全体としてパニック障害の本人はもちろん、家族を支える「家族療法」ですが、効果を発揮する主な理由は以下の4つです。

1、家が本当の「こころの充電場所」になる

パニック障害の人は、家の中でもいつ発作が起きるか分からない、家族に心配をかけたくないなど、家のなかでも緊張していることがよくあります。

家族療法において家族全員が病のことを正しく理解し、無理に励ましたり腫れ物に触るような扱いをしなくなると、家という存在が「100%リラックスできる場所」に変化していきます。

この感じる安心感こそが、乱れていた自律神経を整えていく作用になります。

2、「良かれと思って」の悪循環を防げる

ときと場合において、家族の思いやりや優しさが、実はパニック障害の症状を長引かせてしまうことがあります。

それはたとえばですが、本人が怖がるからと家族がどこへでも率先して付き添ったり、家事をすべて代わりにしてあげたりなど、常に家族が関係している場合など。

もちろんこれは優しさからくる行動ですが、この行動が続くと本人のこころの中に、

「自分ひとりではまったく何もできない・・・」

という自信を失う恐れがあり、かえって予期不安が強まったり精神的に不安定となることがあるんですね。

家族療法では“支えるけれど本人の力を奪わない”という家族療法ならではのセオリーを踏まえ、絶妙なバランスを家族で練習していくため、回復へとつながっていきます。

もちろん本人が家族の力を必要としているとき、家族の力がないと難しいときなどは家族のサポートが優先されます。

3、家族の「不安の連鎖」を止められる

「不安」という感情は、まるで風邪のように家族の間でうつっていくことがあります。

お母さんが不安そうな顔をしていれば本人も不安になり、それを見たお父さんも不安や心配からイライラしてしまう・・・など。

家族療法はこの不安の連鎖を止める役割も果たすので、家族が落ち着きを取り戻すことで本人のこころも自然と安定していく、というプロセスが生まれます。

4、サポーターである家族が倒れないために

パニック障害の改善への道筋は、まるでマラソンのように長く続くと感じることがあります。

支える側の家族も本人同様、実は心身ともにヘトヘトになっていることは意外と多いものです。

支えている家族自身のケアも大切にしていく、それも家族療法の役割となりますので、家族といったサポーターが元気になり、こころにゆとりができること、それが結果として本人を支え続ける強い力となります。

このように、家族全員がパニック障害に立ち向かう、一致団結したチームになることでひとりの力では難しかった完治/改善への道がぐっと近くなります。

家族療法の具体的な実践方法とステップ

家族療法は専門のアドバイザー(カウンセラー)を交えておこなう家族の作戦会議、と言えるものです。

重要なことをただ集まって話し合う、ということではなく、適した実践方法とステップがあります。

ここでは家族療法の実践方法とステップをわかりやすくお話していきましょう。

ステップ 1:みんなの考えていること、意見を聴く(場に出す)

まずは本人だけではなくご両親、時には兄弟も一緒に集まり、それぞれの頭のなかにあることを場に出していきます。

「本人は何に困っているのか?」

というのは重要な視点ですが、そこだけではなく、たとえば、

「お母さんはどんな時に心配になるのか」

「お父さんはどう助けたいと思っているか」

「兄弟が感じていること、思っていることは?」

など、家族それぞれの考えや思いをひとりずつ場に出していきます。

家族全ひとりひとりが考えていたこと、思っていたこと、感じていたことを場に出すことができた、みんなと共有できた、ということで改めて団結することが最初の第一歩です。

肯定的な意見もあれば、否定的な意見もあるかもしれません。しかし、否定的な意見があってもあえてその場に出すことで認識が共有でき、ではどうしていけばいいのか?方向性が明確に定まっていくでしょう。

ステップ 2:パニック障害を“共通の敵”と見る(外在化)

家族療法で使われる面白いテクニックのひとつに「症状に名前をつける」といったものがあります。

たとえばですが、パニック発作を「パニックおばけ」や「パニックヤロウ」と呼んだり。

そして、パニック障害に陥った者が悪いのではなく、パニックヤロウが家に来てみんなを困らせている、と考えます。

このように、家族同士が責めあうのではなく、家族にひとつの敵を作ることで、

“家族みんな対パニックヤロウ”

といった、家族が一致団結し協力しあう新たな関係性を作ることができます。

ステップ 3:家族内の“無意識のやり取り”を変える

家族内で無意識にくり返されているやり取り、どの家族においても例外なくそれはあるものです。

そして、そのやり取りはパニック障害に対して悪影響を与えることが多く、この“無意識のやり取り”を変化させていくことも大切です。

例として

本人が不安そうな顔をする
お母さんが「大丈夫!?」と何度も聞いてしまう
⇒本人は余計に「自分は危ない状態なんだ」と不安を高め内側にこもってしまう

上記のような“無意識のやり取り”に気づくこと。ひとつの改善例として、

改善例

本人が不安そうな顔をする
⇒お母さんは顔色に触れず、淡々と家事をこなし普通に接する
⇒本人は不安を高めることなく普段の行動に落ち着く

改善のしかたは他にもありますが、このような形であえて“新しいやり取り”(接しかた)を試します。

ステップ 4:宿題とチャレンジ(実践)

家族一丸となったカウンセリングの時間は大切ですが、それだけでなく、家で試してみるよう「小さな宿題」が出されることもあります。

こちらもたとえば、

「今週は本人がひとりでコンビニに行ってみる、その間お母さんは家で家事をこなしている」

というような、本人へのかかり切りを止めて2人の距離感を保ってみる、といった練習などですね。

このようなことをくり返していくことで、家族の間に新しい視点や感覚が訪れ、本当の意味での本人の「自律」が促されていきます。

家族療法の実践における注意点と心がまえ

家族療法というのは、

“家族をひとつのチーム(システム)とした捉え、それに変化を加えることで改善を促す”

といったある意味パワフルな心理療法ですが、進めかたや歩みかたを間違えると逆にお互いが傷ついてしまう可能性があります。

ここからはみんなが笑顔でゴールに向かうため、大切となる4つのポイントをまとめました。

家族の話し合いは「本人を責める場」ではない

家族内で問題が生じ話し合いとなると、つい“犯人捜し”をしてしまい、それを皮切りに責め合いが始まることがあります。

「あなたのせいで旅行に行けなくなった」

「もっとしっかりしてよ」

「甘えてないで現実をみろよ」

というような不満などを本人にぶつけ、犯人として責めながら本人への「裁判」を始めてしまう。

ですが、家族療法は本人を責めて裁くためにある「裁判」では一切ありません。

本人はすでに「自分が悪い」と自分を責めていることが多く、心がいっぱいいぱいになっていることがほとんどです。

とても大切なことは“誰が悪いのか”と犯人責めをすることではなく、“ではどうすれば家族みんなが楽になれるかのか?”を話し合うことです。

この視点が抜け落ちないように注意が必要です。

無理に全員を参加させようとしない

家族療法は“家族が一丸となって”というのがひとつのテーマではありますが、しかし、

「家族全員がそろわないと意味がない」

というようなスタンスで乗り気ではない家族を無理やり引きずってくるのは逆効果と言えるでしょう。

まず初めは「本人の力になろう」と思っている人だけ、感じている人だけで始めるのでも問題ありません。

少人数だから結果が出ないということはなく、不思議なことに、

“家族のひとりが接しかたを変えるだけで、参加していない他の家族との関係や家族全体の空気も少しずつ変わっていく”

といったことが多々起こります。

無理に一気に全員ではなく、やってみようと思った人から大きな一歩へと変化していきます。

支える家族が自分の人生をしっかり楽しむ

パニック障害の本人を支える家族は責任感が強いことも多く、自分の時間や楽しみを後回しにしてしまいがちです。

パニック障害を抱えている本人、それを支える家族側がヘトヘトに疲れて笑顔が消えてしまうと、本人はさらに「自分のせいで申し訳ない」と追い詰められてしまうことは多くあります。

ご家族の人は支えていくことはもちろん大切ですが、自分の時間をしっかり持つことも非常に重要です

支えるサポーターが元気であり、自分の人生を楽しんでいる姿を見せること。

それも結果として本人の安心感へとつながっていきますので。

小さな小さな変化を喜ぶ

パニック障害の完治/改善は、三歩進んで二歩下がるような非常にゆっくりとしたペースになることは多いものです。

できないこと、動けないことに目を向けるのではなく、

「今日は玄関まで出られたね」

「前よりも自分のことを話せるようになったね」

「お手伝いしてくれてありがとう」

というような、小さなプラスの変化を見つけ、それを言葉にして伝え合いましょう。

家族からの「見てるよ」「がんばってるね」というひとことは、本人の勇気や自信へと形作られていくでしょう。

======

====

==

ここまでお読みいただきありがとうございます。

家族療法についての説明は以上となります。

続いて、他のカウンセリング(心理療法)についてはそれぞれ下記からおすすみください。

▶ 1、森田療法について詳しくはこちら

▶ 2、認知行動療法(CBT)について詳しくはこちらから

▶ 3、来談者中心療法(傾聴技法)について詳しくはこちらから

▶ 5、TA・ゲシュタルト療法について詳しくはこちらから

▶ 6、認知療法について詳しくはこちらから

▶ 7、マインドフルネス認知療法について詳しくはこちらから

▶ 8、フォーカシングについて詳しくはこちらから

▶ 9、ヒプノセラピーについて詳しくはこちらから

▶ 10、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)について詳しくはこちらから

▶ トップページへ