パニック障害に適した10のカウンセリング(心理療法)

先ほどはパニック障害に有効とされる10のカウンセリング(心理療法)について軽く触れましたが、ここからはそれぞれのカウンセリングについて概要や特徴、実践方法、注意点などお話していきます。

まずは日本のカウンセリングにおいて古く歴史のある「森田療法」から見ていきましょう。

森田療法とはなにか(概要)

森田療法は、日本の精神科医である森田正馬(もりた しょうま)によって1919年頃に創始された、不安や恐怖を乗り越えるための独自の心理療法です。

特にパニック障害や不安障害など、いわゆる神経症と呼ばれる心の病に有効とされ、100年以上の歴史を持つ日本発祥の精神療法として知られています。

この森田療法の最大の特徴は、

「不安や症状をどうにかしようとしない」

という視点、見かたにあります。

不安を敵として排除しようとするのではなく「あるがまま」に受け入れ、その上で現実の生活や建設的な行動に焦点を当てることを目指しているんですね。

「不安なのは自然なこと」としっかり認識し、不安を抱えたままでもやるべきことに手を付けていく(行動の尊重)ことで、結果的に不安が解消され、生きる力が回復していく、ということを目指します。

森田療法の主な特徴(「あるがまま」「目的本位」の重要性)

森田療法が他の心理療法と大きく異なる点は“不安や症状に対する独自の捉えかた”にあると言えるでしょう。

森田療法の基本「不安は“あるがまま”に」

森田療法の核心となるのは「あるがまま(ありのまま)」という概念であり、それの受容(受け入れ)です。

パニック障害に陥り苦しみに悩む人は、不安や動悸、息苦しさといった症状を「何とか排除しなければ」と強く考えがちです。

しかし、森田療法では、

“症状を排除しようとすればするほどかえって症状に意識が集中し、悪化する”

というメカニズム(精神交互作用)を重視しているんですね。

森田療法の「あるがまま」とは、

“不安や不快な感覚が頭の中に生じている事実を否定せず、これは自然な感情だとして、そのまま受け入れる”

ということです。

不安を無理に消そうとせず、むしろ「不安があって当然」と捉えること。そして不安に囚われている状態(囚われ)から解放される道筋をつけていくことです。

「行動の重視」により“目的本位”で生活を立て直していく

森田療法は、思考や感情の分析よりも“行動を尊重する”のが特徴です。

たとえ不安を抱えていても行動すべきことに目を向け、それを実行する「目的本位」の態度を促しています。

たとえばですが「不安で動けない」と感じていても、不安な自分を一切否定せず「不安を抱えながらもやるべきことをやる」という姿勢が大切であるとされています。

日常の生活の中で仕事をこなす、家事をおこなうといった目標を持ち、それに対する建設的な行動を積み重ねていく。

そうすることで徐々にではありますが、不安感は薄れていくものです。

そして、その行動により自己肯定感と自信が回復し、生きる力が育まれていく、ということを目指します。

行動を通じて得られた成功体験が不安に対する新たな見かたを生み出し、自然治癒力を引き出す、というのが森田療法のアプローチです。

森田療法がパニック障害に有効な理由

森田療法の歴史は古く、パニック障害など心の病である神経症に有効とされるのは、この病気のメカニズムと森田療法の基本的な考えかたが深くかみ合っているからなんですね。

ここからは、その深くかみ合っている部分についてお話していきましょう。

「精神交互作用」の断ち切り

パニック障害の多くは動悸や震え、過呼吸といった苦しさから生まれ身体感覚を異常に恐れ、

「このまま死んでしまうのではないか・・・」

という思考、いわゆる“予期不安”を生み出すことで負のループに陥ります。

このような現象を、森田療法では“精神交互作用”と呼んでいるんですね。

人間の意識というのは、何かを頭のなかから無くそうと思えば思うほど、かえって意識がそこに集中してしまうものです。

不安に対しても同じく「不安をなくそう」とすればするほどかえって不安に意識が集中し、症状が敏感になり、さらに不安が増すという悪循環に陥ります。

先ほども述べましたが、森田療法は「あるがまま」に不安を受け入れること(受容)で、この悪循環自体を中断させ、症状への過度な囚われから解放する効果があります。

行動することよる自信の回復

パニック発作を経験すると「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が強まる傾向にあります。

そして、その予期不安から外出や活動を避ける回避行動(広場恐怖)が増え、生活の範囲が狭くなってしまいがちです。

森田療法は、この回避行動をストップさせ、たとえ不安があっても行動する(目的本位)ことを強く促します。

ほんの小さなことからでも行動を再開し、成功体験を積み重ねることで、

「不安を感じても大丈夫だった」

「以前のように自分はできる」

という建設的な自信を取り戻していきます。

不安を“生への欲求の裏返し”と捉える

森田療法では、パニック障害など神経症における不安や恐怖を、

“よりよく生きたいという「生の欲望」の裏返し”

と捉えています。

多くは不安を悪いものとして排除しようとしますが、そうではなく、生きるエネルギーの一部であると解釈すること。

その解釈がパニック障害の症状に対する視点を根本的に変えていき、前向きな行動へとエネルギーを振り向けられるようになっていきます。

森田療法の具体的な実践方法とステップ

森田療法の実践は、先に述べた2つ“「あるがまま」の受容”と“「目的本位」の行動”の二本柱で構成されます。

森田療法は本来、寝泊まりできる宿泊環境のある施設(厳格な環境調整)でおこなうものであり、数日間から数週間(状況により日数は変わる)、世間からあえてクライアントさんを隔離させおこなっていました。

クライアントさんにあえて世間と一旦距離をとってもらうことで、生への渇望を感じてもらうというプロセスなんですね。

これまではそういった環境のなか、徐々に社会生活へ戻る過程を経てきましたが、現代では外来カウンセリングやセルフケアでもその原則が活用され、宿泊ではないアプローチが増えました。

【ステップ1】不安・症状の「あるがまま」の受容(受け入れ)

この最初のステップでは、不安やパニック発作を排除しようとする努力を停止させていきます。

動悸、めまい、震え、息苦しさといった不快な感覚が生じても、

「これはパニック発作の症状であり、命に関わるものではない」

と認識し、そのままなにもせず、抗わず放置します。

現れる症状を「悪」と捉えず、これは自分の感情のなかの一部である、として受け入れる練習。それがこのステップ1です。

【ステップ2】行動への徹底的な集中(目的本位)

たとえ不安があってもそれに集中せず、今やるべきこと、達成したい目標に向けて行動します。

これが「目的本位」と呼ばれる行動です。

たとえばですが、いまいち調子が下降しているので「体調が悪いから休む」のではなく、「体調が不安でも仕事や家事、日課をこなす」ことに焦点を当てます。

この時、もし不安を感じていても「自分がダメだ」など否定する必要は一切ありません。

【ステップ3】内省する(振り返り)

なにかしら行動したあと、自分の感情や思考を内省していきます(振り返り)。

この内省はあくまで不安を分析するためではありません。

なにかしらの行動を通じて得られた事実、たとえば不安だったけど電車に乗れた、などを認識し、感情の動きに一喜一憂することなく次になにをすべきか?を考えます。

お話したステップ1からステップ3までを繰り返し実践すること、

「たとえ不安があっても行動することはできる」

という体験を通した真実が心のなかに積み重なっていき、症状への囚われが自然と解消へ向かっていきます。

森田療法の実践における注意点と心がまえ

森田療法はパニック障害など不安障害に対して強力な効果を発揮する心理療法ですが、その考えかたを誤解すると、かえって逆効果になる可能性があります。

森田療法の実践にあたっては以下の点に注意し、正しい心がまえを持つことが大切です。

【注意点1】「不安を我慢する」ということではない

湧き上がる不安感、その不安を感じる自分を否定せず「不安なのは自然なことだ」と事実として受け入れる、ということです。

無理に感情を抑え込むと膨れ上がることが多く、かえって心身の緊張を高めてしまうため注意が必要です。

【注意点2】完璧を行動を目指さない

“行動の質”ではなく“行動すること自体”を目的としています。

パニック障害を完治/改善していくうえで小さな一歩、たとえば「いつもより少し遠くへ買い物に行く」「10分だけデパートに入ってみる」をという行動を“不安でもできた”と評価し、継続していくことに重きを置いています。

体験を通じて理解していく、という心がまえ

森田療法は、理屈や理論的に理解するよりも“実践を通じて身体で納得していく”といった要素が強い療法です。

たとえ一時的に不安や恐怖が増すような感覚があっても、

と捉えることがとても重要です。

もし、不安感やなにかしらの症状に囚われそうになったとき、その都度「いま、自分は何をすべきか?」という行動の問いかけに戻ること、建設的な行動を積み重ねる姿勢そのものが完治/改善への鍵となります。

ここまで森田療法についていろいろ述べてきましたが、いかがでしたか?

森田療法についての説明は以上となります。

続いて他のカウンセリング(心理療法)について、それぞれ下記からおすすみください。

▶ 2、認知行動療法について詳しくはこちらから

▶ 3、来談者中心療法(傾聴技法)について詳しくはこちらから

▶ 4、家族療法について詳しくはこちらから

▶ 5、TA・ゲシュタルト療法について詳しくはこちらから

▶ 6、認知療法について詳しくはこちらから

▶ 7、マインドフルネスについて詳しくはこちらから

▶ 8、フォーカシングについて詳しくはこちらから

▶ 9、ヒプノセラピーについて詳しくはこちらから

▶ 10、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)について詳しくはこちらから

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