パニック障害・・・・・その多くは突然、強い不安や恐怖といった不快感情が湧き上がり、それがピークに達する“パニック発作”をくり返す心の病です。
このパニック発作というのは下記の症状のいずれか、もしくはいくつかが並行して現れます。
心臓がバクバクする(動悸)
過呼吸
息が詰まる感覚
めまいや立ちくらみ
吐き気、胃の不快感
身体や手足の震え
手足や身体に大量の汗をかく
身体が揺れる感覚
強い胸の圧迫感や痛み
頭がフワっと軽くなる
失神してしまいそうな感覚
身体の火照り感
急な身体の寒さ
手足や顔がピリピリする
手足や身体、顔がしびれる
現実感覚が無くなる
離人感
気が狂ってしまうという恐怖感
身体のコントロールができない感じ
死への強い恐怖感
上記の症状の多くは数十分くらいで収まりますが、場合や状況により長いときは1時間から2時間近く収まらず、強烈な苦しさを伴うことがあります。
また、頭のなかでは、
「このまま死んでしまうのではないか」
「おかしくなってしまうのではないか」
という問いかけがおこなわれることが多々あり、それを含めてとても長い時間に感じられることもあります。
パニック障害とパニック発作の違いについて
「パニック発作」と「パニック障害」はしばしば混同されますが、この2つは明確に異なる概念となっています。
まず“パニック発作”というものは「個別として現れる症状」であり、パニック発作単体としても存在するものです。
一方“パニック障害”というのはパニック発作が数時間ごとに発生する、または毎日発生する、一日ごとに発生するなど、ある程度連続して引き起こされるものです。
そこにプラスして「予期不安」「回避行動」などが伴った場合、それは「病態全体」として表され複合して「パニック障害」と診断されます。
パニック発作(Panic Attack)とは一時的な症状を表すもの
パニック発作とは、基本何の前触れもなく突発的に現れる強い不安と身体の異常が急速にピークに達する状態を指しています。
先ほどお伝えしたように、動悸、息切れ、胸の痛み、めまい、吐き気、手足の痺れなどが単体、もしくは並行して起こります。
そして、死んでしまうかのような恐怖や気が狂ってしまうのではという極度のストレスが襲いかかってきます。
これは少々重要なことなのですが、パニック発作というのはパニック障害を持つ人に限らず、極度のストレスや他の不安障害、特定の身体疾患(甲状腺機能亢進症など)、または薬物の影響においても単発で起こり得ます。
要は健常者と言われる一般の方々にもパニック発作が起こる可能性は十分あり、日頃から精神面や身体面での健康管理が大切となります。
また、先ほども少し触れましたが、パニック発作を一度経験したからといって、それが直ちに「パニック障害」と診断されるわけではありません。
ただし、その一度の経験がちょっとしたトラウマ的となり、思考が不安や恐怖に支配されてしまうとパニック障害へ陥ってしまう可能性はありうる、ということです。
パニック障害(Panic Disorder):病態全体を表す診断名のこと
パニック障害は、単にパニック発作が起こるというだけではなく、パニック発作をくり返すことによって引き起こされる二次的な問題も含めた“病態全体”のことです。
パニック障害と診断されるのはパニック発作がくり返し起こることに加え、以下の2つの主要な要素が1ヶ月以上続いてしまう場合です。
予期不安(Anticipatory Anxiety)
「またいつ、どこであの発作が襲ってくるのだろうか・・・・」
というような、次のパニック発作に対する持続的な懸念や心配が頭のなかでグルグル回ってしまうこと。それが“予期不安”です。
パニック発作そのものの苦しみだけではなく、この「また来るかもしれない」という不安や心配に思考を乗っ取られることが、パニック障害を慢性化させる大きな要因となってしまいます。
行動の変化(広場恐怖/回避行動)
パニック発作が一度起こった場所、多くの人はその場所がちょっとしたトラウマとなり、意識的であれ無意識的であれ、その場所に近づきたくない感覚に陥ります。
具体的には、電車や飛行機、車といった乗り物、美容院の椅子、歯医者や病院の診察待ち、映画館やデパートの人混み、などを避けるようになります。
こういった避ける状態は“広場恐怖”と呼ばれ、日常生活の範囲を狭めてしまい、社会的な活動を困難にしてしまいます。
パニック障害になってしまう原因とは?
パニック障害という心の病は誰にでも起こり得る、というお話をしましたが、ではなぜ?パニック障害に陥ってしまうのでしょうか。
陥ってしまう原因は一つではなく、「脳の仕組み」「心と体の状態」「生活環境」といった3つが複雑に絡み合っていると考えられています。
脳の誤作動により警報装置が過敏になっている
私たちの脳の中には、危険を察知して身体に「逃げろ!」と指令を出す警報装置のような働きをする部分が備わっています。
この部分の名称は「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれています。
パニック障害に陥ってしまう人は、なんらかの原因によりこの警報装置がとても過敏な状態になっている、と言われているんですね。
危険ではない状況、たとえばですが、電車の中や会議中、どこかに外出しているときなど、突然脳が「大きな危険が迫っている!」と勘違いしてしまい、混乱を引き起こします。
そうなると脳は身体に「闘うか?逃げるか?」の準備をするよう指令を出し、心臓を速く動かしたり呼吸を速めたりと身体を活性化させていきます。
この状態こそが、様々なパニック発作の引き金となっていくものです。
この誤作動には、脳内の神経伝達物質(脳の情報をやり取りする化学物質)である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」などのバランスが崩れており、それが強く関係していると言われています。
また、脳に関する説にはもうひとつあり、それは「延髄(えんずい)」と呼ばれる部位の機能に何らかの異常があることによって引き起こされる、というものです。
この延髄という部位は、生命維持に直結する重要な役割を複数担っていると言われており、
・呼吸中枢: 呼吸を自律的に調節する働き
・循環器中枢: 血管の収縮や拡張、心拍数やを調整する働き
・嚥下中枢: 食べたものを飲み込む動きを制御する働き
・消化器中枢: 胃腸の運動や消化液の分泌を調節する働き
・反射中枢:せき、くしゃみ、嘔吐、唾液の分泌、涙液の分泌などの反射を制御する働き
上記がその役割と言われています。
過度なストレスと身体の疲れが心のキャパシティーを超えている
統計的なお話ですが、パニック障害を発症する多くの人が発症前に強いストレスや心身の大きな疲れを経験している、ということがわかっています。
私たちの心というのは、日々様々なストレスを受け止めるのに必要な、タンクのようなものが備わっているんですね。
そのタンクがあふれてしまい、キャパシティーを超えてしまうとパニック発作という形で警報を鳴らす、というものです。
たとえば仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、受験勉強など、日常起こり得るストレスがありますよね。それらが水のようにタンクに溜まっていきます。
また、睡眠不足や栄養バランスの偏り、過度なカフェインの摂取、スマホなどのブルーライトを長時間浴びるなどもタンクの水位を上げると言われています。
このタンクに溜まっていくストレス値があふれそうになったとき、つまりは心と身体が限界に近づいたときに、脳の扁桃体の誤作動が起こりやすく、パニック発作という警報により「もう休んで!」というサインを出す、という仕組みです。
性格上のことですが、真面目過ぎたり完璧主義であるというのもストレスを溜め込みやすく、心のタンクが満タンになりやすい傾向にあると指摘されています。
環境と学習(記憶)により不安のループにはまってしまう
一度でもパニック発作を経験すると「あの場所でまた発作が起きたらどうしよう・・・」というような「予期不安」が生まれやすくなります。
その予期不安によってパニック発作が起きた場所(例:満員電車、美容院など)を避けるようになり、行動範囲が狭くなってしまいます。
この一連の状態は「広場恐怖」と呼ばれるものです。
パニック発作が起きた場所を避けることで一時的に不安は解消されますが、脳は「避け続けていれば安全だ」と学習(記憶)してしまい、不安のループから抜け出せなくなる、というメカニズムが生まれてしまうんですね。
このように、パニック障害というのは脳の過敏さにストレスや疲れが加わり、さらに不安を避ける行動がそれを強めてしまうという、複合的な原因で起こるとされています。
パニック障害はどのように診断されるのか
パニック障害は身体の病気ではなく脳の誤作動によって引き起こされる心の病であり、そこには様々な原因や要因が潜んでいます。
ですが、心臓のドキドキ感や息苦しさ、胸の痛みなどは一定の身体の病気の初期と似ているところもあり、一概にはパニック障害と断定できません。
パニック障害か否かの診断については病院など医療機関の判断となるため、当WEBサイト「パニック障害改善LABO」での範囲外となりますが、診断についてはある意味大切な要素となるため、診断についても見ていきましょう。
医療機関により身体の病気ではないことを確認する(鑑別診断)
パニック発作の症状として現れる激しい動悸や息苦しさなどは、心臓の病気(不整脈など)や呼吸器の病気、甲状腺の病気など、身体の病気の症状ととてもよく似ています。
そのため、パニック障害の診断での最初のステップとなるのは、
「現れた症状は身体の病気ではなくあくまで心の症状」
ということを確認する工程となります。
内科や循環器科での検査については主に心電図、血液検査、胸部X線検査などをおこない、発作状態の原因が身体的な異常ではないかをチェックします。
上記の検査にて異常が見つからなかった場合は、発作状態の原因は心や脳の働きにある可能性が高いと判断され、精神科や心療内科での診断へと進んでいきます。
医師や心理士などによる問診(心理的評価)
精神科や心療内科に移った場合、最初のステップとして医師や心理士があなたの症状や生活について詳しくお話を伺います。
これが「問診」と呼ばれる診断の中心となる工程です。
この問診では主に以下の3つのポイントに当てはまるかどうか?を確認します。
1、パニック発作の基準を満たしているか?
精神医療の世界、診断の基準として世界的に使われているのがDSM-5という、精神障害の診断を図れる統計マニュアルです。
このDSM-5に基づき、発作状態の症状が13の特定の症状(例:動悸、発汗、震え、息苦しさ、胸の痛み、めまいなど)のうち4つ以上該当しているか?そして発作状態が予期せず突然起こっているか?を確認します。
2、予期不安と回避行動(広場恐怖)があるか?
2つ目のポイントは、予期不安と回避行動について当てはまるか?確認していきます。
発作が起きそうな場所(満員電車、人混み、会議室など)を避けるようになっているか?
上記の2点のチェックが終わったら、次の3つ目のポイントに移ります。
3、他の精神疾患の可能性はないか?
パニック障害と症状が似ている他の不安障害(社交不安障害、全般性不安障害、強迫性障害など)やうつ病など、別の心の病ではないかどうか?を確認していきます。
3. 正しい診断を受けるための受診のポイント
診断を受ける際は、下記の事柄を聞かれることが多いため、自分を振り返りながら答えるようにしましょう。
1、発作が起きたときの状況と症状について(いつ、どこで、どんな症状が、どれくらいの時間続いたか、など)
2、発作状態の頻度について
3、発作を恐れて避けている場所や行動について
4、現在感じているストレスや身体の不調について
自分を振り返ったとき、上記の情報がわかるほど医師はいま起きている症状を深く理解し、適切な診断を言い渡すことができます。
診断を言い渡された後は治療プランなどについての説明を受けることが多いものですが、病院は薬物療法が基本となるので、パニック障害の適切な改善へたどり着くことはなかなかありません。
もちろん病院での治療を受けることを否定しませんが、治療プランはあくまで提案ですので、できればパニック障害の専門家(当WEBサイト「パニック障害改善LABOなど」)の扉を叩くのが良いでしょう。
現在、パニック障害の診察ができる施設は大きくわけて3つあり、それは、
民間のカウンセリング施設
心療内科(医療施設)
精神科/メンタルクリニック(医療施設)
となっています。上記の3つはそれぞれに役割が違っており、心療内科と精神科は似た内容となっていますが、民間のカウンセリング施設は医療施設ではないため、診断(パニック障害であると伝えること)や向精神薬の処方ができません。
パニック障害の診察ができる施設について、詳しくは下記ページも合わせてご覧ください。
パニック障害と併発しやすいこころの病(症状)
パニック障害は単独では発症するというよりも、他の症状をいくつかセットで抱えてしまうことが多いこころの病です。
これは、脳の「不安を感じるセンサー」が敏感になっているため、他の刺激にも反応しやすくなっているからと言われています。
ここでは、パニック障害と併発しやすい代表的な症状を大きく3つのグループに分けて紹介していきましょう。
1、不安やこだわりが強くなる「神経症」
グループの1つ目は「神経症」というものになります。
パニック障害自体もこの「神経症」というグループに入りますが、次のような症状と併発することがあります。
広場恐怖症
この「広場恐怖症」という症状は、パニック障害であれば多くの人が経験すると言っても過言ではありません。
逃げ場がない、閉塞感の感じる場所(電車、美容院、デパート、人混みなど)に不安や怖さを感じ、そこを避けてしまうといった状態です。
社交不安症(社交不安障害)
人前で話すことや、注目を浴びることに強い不安や恐怖を感じるといった症状です。
「パニック発作が起きて恥をかいたらどうしよう・・・」というような不安から、会議での発言や仲間内での発言が苦手となってしまいます。
全般性不安症(全般性不安障害)
特定の場所だけではなく、生活についてのあらゆることについて「悪いことが起きるかも」と漠然とした強い不安、心配を感じ続けてしまう症状です。
強迫神経症
「手が汚れているかも」「カギをしっかり閉めたかな」など、何度となく確認したり、自分の意志に反して同じ考えが浮かびあがり、同じ行動を延々とくり返してしまいます。
2、気分が沈んだり波が出たりする「感情」の病
グループの2つ目は「感情の病」についてです。
強い不安が長く続いてしまうと、心のエネルギーが削られてしまい気分や感情のコントロールが難しくなり、下記のような症状が現れることがあります。
うつ病
パニック障害の人の約半数が経験すると言われている症状です。
うつ病は何ごとにも興味が持てなくなってしまい、眠れない、食欲がない、楽しめない、ひどく落ち込むといった状態が続きます。
双極性障害(躁うつ病)
以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、とても活動的で元気すぎる時期(躁状態)と、気分がどん底に落ち込む時期(うつ状態)をくり返します。
パニック障害は、この気分の波がある時に併発しやすいと言われています。
3、身体の感覚や心のバランスに関する不調
グループの3つ目は身体感覚や心のバランスについてのものです。あまり多くはありませんが、時としてパニック障害と併発することがあります。
自律神経失調症
身体検査では異常がないのに、めまいや立ちくらみ、お腹の不調といった症状が続く状態です。これらはパニック障害の身体症状と非常によく似ているという特徴があります。
統合失調症
頻度は高くありませんが、強いストレスから「誰かに見られている」と感じたり、聞こえないはずの音が聞こえたりする状態(精神病症状)が現れるというものです。
とくに聞こえないはずの音や声(幻聴)が聞こえるという症状が多く、本人には聞こえるのに周りには聞こえない、というギャップに苦しむことがよくあります。
ここまでパニック障害と併発しやすい心の病についてお話してきましたが、これらは強い不安状態から派生することが多く、パニック障害の改善によって消えていく症状はかなりあります。
ですが、場合によっては併発した症状だけ残ってしまう場合もありますので、その際はその症状に特化して改善を促すことが必要となります。
パニック障害の歴史(日本でどう知られるようになったのか)
いまでこそ「パニック障害」という名称は広く知られていますが、昔は別の名称で呼ばれていたり、正しく理解されていない時代が長く続きました。
ここではちょっとした知識として、パニック障害が日本でどのように知られるようになったのか?その歴史を紐解いていきましょう。
昔は「心臓の病気」だと思われていた?
1980年代より前は、いまのパニック障害にあたる症状は“不安神経症”もしくは心臓がドキドキすることから“心臓神経症”などと呼ばれていました。
当時はまだ原因がはっきり分かっておらず、病院へ行っても「身体に異常はありません。気のせいです」と平気で言われてしまい、一人で苦しむ人がとても多かったとの記録があります。
「パニック障害」という名前の誕生
「パニック障害」という名称が付与されることとなる、大きな転換期となったのは1980年代です。
アメリカでこころの病の診断ルール(DSM-III)が新しく作られた際、そこで初めて「パニック障害」という名称が正式に決定しました。
そこから年月が過ぎ、1990年代に入ると日本でも「パニック障害」という新しい考えかたが医療の現場に広まり、
「強い不安や性格、心臓の問題ではなく、脳の働きのバランスが崩れたことで起きる病気だ」
という正しい認識がすすみ、現在にいたります。
芸能人など有名人の告白と理解の広まり
2000年代に入ると、テレビで活躍する有名な芸能人やスポーツ選手が「実は自分もパニック障害で悩んでいた」と公表するニュースが増えました。
これらの告白により、
「あんなに元気そうな人でも陥る病なんだ」
「誰でもかかる可能性がある身近な病気なんだな」
という理解が広くすすみ、「パニック障害」という名称そして病の内容が日本国内にも一気に広がりました。
現在は臨床結果や科学的データによる研究がすすみ、状態により向精神薬を用いる、カウンセリングを取り入れることで「改善が可能なこころの病」として定着しています。
昔のように「根性が足りないからだ」といった根性論や精神論的な誤解は、いまの医学分野およびカウンセリング分野では完全に否定されています。
さて、ここまでいかがでしたか?
このページでは「パニック障害とは」と称して、
パニック障害とパニック発作の違い
パニック障害になってしまう原因
パニック障害の診断
併発しやすいこころの病
パニック障害の歴史
パニック障害についての様々なことに触れてきました。
続いて、パニック障害の完治/改善はどのようにすすめれば良いのか?については下記より次のページへおすすみください。




発作が起きていないときにも「また発作が起こるのではないか」と過度に心配し、恐れている状態が1か月以上続いているか?